サッカーコラム 「海外移籍とJリーグ」

 まず、今回このような企画を立案していただき、僕のような「シロート」に、コラムの投稿をさせて下さいました、ぶらんかさんに心から感謝申しあげます。
 さて、今回の投稿にあたり、何について書こうか考えたのですが、こちらのサイト「TODO CONSADOLE」さんでは、スペイン語講座など、ワールドワイドな作りになっていることに注目し、今が旬な、Jリーガーの海外移籍問題と、もっと大きな視点で見たJリーグについて、書かせて頂こうと思います。
 
 ただ、これから書き進めるコラムは僕個人の「サッカー観」が基になっていますので、内容に不満があるからと言って、決して「ぶらんか」さんに、苦情などをお寄せになりませんよう、お願い申し上げます。
 所詮、「シロートのたわごと」だと思って、軽く読み流して頂ければ幸いです。



 2001年7月、浦和レッズの「伸ちゃん」こと「小野伸二」がオランダの名門、フェイエノールトへの移籍を果たそうとしている。もしこの契約が本決まりとなれば、来季「欧州CL(チャンピオンズ・リーグ)」の出場権を持つ、このクラブの一員として、日本人初の「欧州CL出場選手」となるだろう。ただ、中田ヒデも、ASローマに残留かパルマ移籍、もしくはプレミア・アーセナルへの移籍という形で落ちつけば、来季「欧州CL出場選手」ということになる。どちらが先になるかは、組み合せ次第ということに・・・。
 その中田ヒデだが、皆さんご存知のように、今季イタリア・セリエAにてスクデット(優勝盾)を獲得。セリエ移籍3年目にしてセリエの頂点に立ち、日本人プレーヤーの潜在能力と可能性を世界中に示してくれた。
 実際、中田ヒデがこのような活躍をするまで、欧州のクラブは「極東の弱小国」の選手になど、興味を示してはいなかった。中田ヒデのセリエ移籍後、名波のセリエA・ベネチア、城のリーガ・バリャドリード、西澤のリーガ・エスパニョールと、立て続けに海外移籍が実現したことが、中田ヒデ効果を如実に物語っている。
 有力な代理人も日本人選手が「商売になる」という事に気付きはじめ、欧州の各クラブとコンタクトを取り合い、日本人選手の物色に本腰を入れ始めている。  
 今後、欧州のクラブは、昨季終盤に「外国人枠(EU諸国の選手は外国人とはみなされないので、正確には(EU諸国外人枠))」が撤廃されたことを受け、外国人選手の獲得に躍起になるだろう。そのターゲットに、日本人選手も多数含まれているはずである。
 W杯本大会を来年に控え、この夏の「移籍市場」で、何人の日本人Jリーガーが海外へと旅立つのか、注目したい。

 さて、前置きが長くなってしまったが、ここからが本題である。
 ここでは、今後激増するであろう、日本人Jリーガーの海外移籍と、Jリーグについて考えていこうと思う。
 日本代表監督トルシエは常々、Jリーガーの海外移籍を推奨している。彼の中には、個人の技術的向上と共に、強く逞しい精神と識見ある人間性の構築には海外移籍は非常に有効である・・・というような認識があり、事実、海外移籍を果たした選手のほとんどが日本代表のユニフォームを身に着けている。こういったことから、「海外移籍」→「日本代表」というような常識というか、既定路線が出来あがり、日本人選手の海外移籍を更に後押しする要因ともなっている。
 これまでは海外移籍について「肯定的」で「プラス」の面ばかりが列挙され、報道等でも海外移籍に関して「否定的」な記事はほとんど目にする事がない。これは、W杯本大会を来年に控え、決勝トーナメント進出を目指す日本代表の更なるレベルアップには、選手個人個人の海外移籍によるレベルアップが不可欠だ。という認識が大勢を占めているからであり、これについて異論を唱えるつもりはない。
 ただ、今後加速度的に代表クラスの選手が海外移籍を果たした場合、「Jリーグの空洞化」という現象が待っている事について、あまり論じられていないような気がする。もし、W杯本大会で日本代表がそれなり好成績(決勝T進出など)を収めた場合、代表選手の多くは海外クラブからのオファーを受け、そのほとんどが、海外移籍に踏みきるだろう。
 そうなった時、最も危惧されるのが「Jリーグの質の低下と空洞化」である。
 これは、自国の代表選手が海外でプレーしている国には共通して起こっている問題で、現在FIFAランキング1位のフランスでさえ、その憂き目にあっている。
 先月コンフェデで日本にやってきたフランス代表を例にとると、登録選手23人中、国外クラブ所属の選手は12人だったが、これは主力選手抜きであるから、「ジダン・アンリ・トレゼゲ・プティ・カンデラ・テュラム・バルテズ」らが加わると、国外クラブ所属の選手は激増する事になる。また、フランス同様にブラジルも国外クラブ所属の選手は12人だったが、こちらも主力の「リバウド・カフー・ロベカル・ロナウド」らが参戦していれば、国外クラブ所属の選手は激増する。
 また、国内に有力なリーグを持たない、「カナダ・オーストラリア・カメルーン」もそれぞれ「カナダ・22/23」、「オーストラリア・19/23」、「カメルーン・21/23」と、登録選手のほとんどが海外でプレーしている。ちなみに、日本の永遠のライバル韓国は「10/23」。それに引き換え、我が日本は「中田ヒデ・西澤」の2人のみ。
 つまり、その国の代表選手のほとんどが「海外」でプレーした場合、その国の「リーグ」は例外なく「質の低下と空洞化」という事態を招くのである。
 日本は幸いなことに、代表選手のほとんどがJリーグで活躍している為、代表として「国際Aマッチ」を戦った選手は、そこで得た知識と経験を所属のクラブに持ち帰り、チームメイトにフィードバックする。そうすることによって、所属のクラブは勿論、Jリーグ全体としてもレベルが上がっていくのである。代表を数多く排出していクラブが「強い」のには、こういう背景がある。
 ただ、前述したように、今後代表選手の海外移籍が相次ぐと、所属のクラブへ「国際Aマッチ」で得た知識や経験がフィードバックされる事がなくなるわけだから、必然的にJリーグの「質」は低下し、スター選手不在という「空洞化」が進むことになるだろう。南米の強国、ブラジルやアルゼンチンのリーグのように、元々、個々の選手のレベルが高く、選手層も非常に厚い国ならば、たとえ「質の低下と空洞化」を招いたとしても、若くて才能ある選手が国内リーグに次々と溢れだし、国内リーグの人気そのものが「衰退」する事はないが、Jリーグの場合こういった状況に耐えられるのか、正直いってかなり怪しいと思う・・・。

  
 では、どうやってこの問題と対峙するかについてだが、世界は広い。見習うべきモデルはあるのだ。 

 まず、欧州と南米のクラブのパワーバランスを考えてみると、クラブ世界一を決める「TOYOTA CUP」の成績からみて、近年は欧州のクラブが上とみていいだろう。ここ10年では「欧州6−4南米」だが、ここ5年では「欧州4−1南米」である
 その上で、現在、世界最高峰の呼び名が高いプロサッカーリーグは「3つ」。
 イタリアリーグ・セリエA、スペインリーグ・リーガエスパニョーラ、イングランド・プレミアリーグ。これは、近年の「欧州CL」や「UEFAカップ」の成績からも、疑いようのない事実である。
 この「3つ」の中でも、僕が最高だと位置付けているのは、イタリアリーグ・セリエAである。ここ数年、スペインリーグ・リーガエスパニョーラ、イングランド・プレミアリーグに押されている感があるイタリア・セリエAだが、僕がセリエAを世界最高だと位置付けているのにはそれなりの根拠がある。
 それは、「代表の強さ」である。
 イタリア代表は「アズーリ」の愛称で親しまれ、W杯で「三度」の優勝を誇る強国中の強国であり、現在のFIFAランクは「4位」。ちなみにスペインはW杯での優勝は「0回」・現在のFIFAランク「6位」、イングランドはW杯での優勝は「1回」・現在のFIFAランク「13位」。
 そして特筆すべきは、イタリア代表の主要選手が「全員」セリエAのクラブ所属という事実。つまり海外でプレーする選手が「一人も」いないのである。あのフランス代表「ル・ブルー」の選手でさえ、海外のクラブを主戦場としているのにだ!
 これが、セリエAを世界最高のリーグと位置付ける根拠だ。
 これはまた、国内リ−グが強ければ海外に出る必要などない!という事をも意味し、こらから海外を主戦場にしようとしている日本にとっては羨ましい限りだ。
 しかし、何故こんな事が可能なのか?

 それはセリエAというリーグには、サッカー選手にとって必要なものが「すべて」揃っているからに他ならない。
 列挙すると「サッカーの質の高さ・圧倒的なホーム&アウェーの雰囲気・高額な年俸・厳しいジャーナリズム・108年という歴史・厳しい競争システムを持つリーグ構造・スタープレイヤーを育てる優秀な下部組織」などがそれにあたる。 
 Jリーグには「何ひとつ満足なものがない」のが、お分かり頂けるだろうか。
 これらをすべて手にするには、それこそ途方もない年月がかかるだろし、代表選手の「海外流出」を間近に控えた日本はそんな悠長なこともいってられない。そこで今回は、セリエAの持つ「リーグ構造」に着目し、Jリーグの方向性を探ってみたい。

 
 セリエAとJリーグ。共にピラミッド型をしたリーグ構造の頂点に立ち、トップの「下位クラブ」と2部の「上位クラブ」の入れ替えが毎年行なわれるという、外見上はほぼ同じような構造をしているが、実は決定的な違いかある。
 それは、各クラブの「格付け」である。
 セリエAは「全18クラブ」で構成されているが、常に優勝を狙えるクラブは「ビッグ7(セブン)」と呼ばれる。ミラン(MILAN)、ローマ(ROMA)、ラツィオ(LAZIO)、ユーベ(JUVENTUS)、インテル(INTERNAZIONALE)、パルマ(PARMA)、フィオレンティーナ(FIORENTINA)の7つのクラブ。実際この10年に限っていえば、スクデットを獲得したのは、ミラン(MILAN)、ローマ(ROMA)、ラツィオ(LAZIO)、ユーベ(JUVENTUS)の4クラブのみ。
 それだけ、これら「ビッグ7」の戦力は抜きん出ていて、代表選手も「ビッグ7」以外にはいない。こう書くと、「ビッグ7」以外のクラブ(地方のクラブは総称して、「プロビンチャ」と呼ばれている)はセリエAの「おまけ」のように感じられるが、「プロビンチャ」には明確な目標と、「プロビンチャ」でしか果たし得ない「重要な役割」がある。
 まず、「プロビンチャ」の目標とは、スクデット狙うことではなく、「UEFAカップ出場権獲得(上位6位迄)」か、「セリエA残留(上位14位迄)」となり、決して「高望み」はしない。それだけ「プロビンチャ」のクラブ自体もティフォシ(熱狂的サポーターのこと)も、自らのクラブが置かれている立場というのを「わきまえて」いるのだ。
 そして、「重要な役割」とは、若手選手の育成と、ピークを「過ぎて」しまった選手の受け皿となることである。まず、若手選手の育成についてだが、例えばイタリア代表のユースもしくはU−23のような「エリートコース」には乗れなかったが、将来への可能性を感じさせる選手がいたとする。こういった選手がもし「ビッグ7」のクラブに入団してしまうと、「ビッグクラブならでは」の厳しく厚い選手層に阻まれて、いつまでも出場機会が回ってこないという状況に陥る。中にはレンタル移籍などで、才能を開花させる選手もいるが、出場機会に恵まれないまま選手としてのピークを過ぎてしまってお払い箱・・・という事になりかねない。
 そこで、才能のありそうな選手はまず「プロヴィンチャ」に入団するのだ。そこで数多くの試合勘と経験を摘み、いい成績を残せば「ビッグ7」から移籍の誘いが舞い込んでくる。例えば中田ヒデ。ヒデがセリエAでのキャリアのスタートを切った「ペルージャ(PERUGIA)」は、湘南ベルマーレから3億円でヒデを買った。ヒデは移籍初年度で「10」ゴールをあげ「ペルージャ」のセリエA残留に貢献。翌年には「ペルージャ」での「王様」の地位を確固たるものとし、その年の「冬の移籍市場」において、15億円という値段で「ローマ(ROMA)」に売られた。このビッグ移籍によって「ペルージャ」は実に、12億円もの利益を得たことになる。
 つまり、若い選手にとって「プロヴィンチャ」は、「ビッグ7」へのアピールとステップアップの場として存在し、クラブ側としては若く有能な選手は「資金調達」の道具という意味も含めて、持ちつ持たれつの関係を築いてきた。これが「プロヴィンチャ」の「重要な役割」である。
 ただ、この「移籍金」だが、今季限りで廃止となることが決定していて、来季から「プロビンチャ」の選手育成の意義と、ビッククラブへの売却益については不透明な部分が多く、場合によってはセリエの根幹を揺るがしかねない・・・。
 また、もう一つ。「プロビンチャ」はピークを過ぎた選手の受け皿としても機能していて、結果「若手とベテランが多い」というチーム編成となることも多く見うけられる。
 簡単にまとめると、セリエAの「リーグ構造」は、常にスクデットを狙う「ビッグ7」と、若手選手らの育成を行なう「プロビンチャ」に大別する事が出来る。従って、「プロビンチャ」所属の選手が「ビッグ7」のクラブへ「移籍」するということは非常に名誉なことであり、選手にとっては「夢」なのだ。
 おらが街の「スター選手」が、「ビッグ7」へ羽ばたいていく・・・。ということに関しては、クラブのオーナーもティフォシも「寛容」で、今季は「バーリ」という「プロビンチャ」から、スクデットを獲得した「ローマ」へ、「カッサーノ」という天才MFの移籍が決まり、バーリのティフォシ(ビアンコロッソという)は、大きな期待と夢を「カッサーノ」に託し、心からの祝福と共に「ローマ」へ送り出したという。
 岡田監督が常々口にする「選手はいつかは、ビッグクラブで、ビッグマネーを掴みたいと思っている・・・」とはこのことなのだ。


 そして日本、「Jリーグ」。
 今後「Jリーグ」が代表選手の大量流出という現実を受けても、リーグを衰退させない為には、上記のセリエAのような「クラブの格付け」が明確になっていかなければならないと思う。
 昨年、我がコンサがJ1への昇格を決めた時、川渕チェアマンはJ1リーグには「A・B・C」のランクがり、コンサを「Cランク」と評した。
 ごもっともである。 
 「資金力と選手層」ということを考えると、コンサが「A・Bランク」であるわけがない。はっきり言って、優勝を狙えるクラブではないのだ。
 と、こんな事を書くとコンササポの皆さんには「袋叩き」にされそうだが、これからはここが一番肝心になってくると思う。
 J1は今後、常に優勝を狙えるAランク・クラブが「5つ位」、その下に常に安定してJ1に残留して、若手選手の育成を積極的に行なうBランク・クラブが「6つ位」、最下層部には毎年J1残留争いを繰り広げるCランク・クラブが「5つ位」というような形で、格付けがもっと「明確で鮮明」になって欲しい。
 ただ、この「リーグ構造」を手に入れようとしても、最大の問題点となるのが日本人の「横並び意識」と「中流意識」である。
 「でる杭は打たれる」という言葉が示すとうり、日本ではどこかだけが「突出」するのを非常に忌み嫌う傾向があり、Jリーグの特定のクラブだけが「ビッグクラブ化」するのも一筋縄では行かないと思う。
 それでも、そうならなければいけないのである。
 もし、現状のような「横並び」な状態が続くと、代表レベルに到達した選手は「海外」に「移籍」するしかなくなってしまうのだが、もし、セリエAのようにリーグのトップに、抜きん出た戦力をもつ「ビッグクラブ」があったとすれば、そこへの「移籍」という選択肢が生まれる。そうすると、益々「Aランク・クラブ」の戦力だけが突出することになり、それについては「否定的」な考え方もあるとは思うが、代表クラスの選手の「海外流出」を防ぐには、それしか方法が思いつかない。
 ちょっと想像して欲しいのだが、もし現代表のメンバーが「誰一人」として、Jリーグに所属していなかったとしたら・・・。
 今以上、Jリーグが「盛り上がる姿」が想像できるだろうか?
 今日(6月29日)、厚別でキリンカップの日本代表公開練習が行なわれたが、そのメンバーが全員「広山状態」になるわけで、海外でプレーする選手に対して今以上の「親近感」が沸くだろうか?別の世界のサッカー選手(広山ように・・・)のような気分になりはしないだろうか?
 
 今回、この問題のコラムを書きながら、自分でも迷っている。 
 ただ、ひとつ言えることは、時間はそれほど残されてはいない。ということだけ・・・。

 JリーグがJリーグとしての「アイデンティテー」を得る事ができるのか、それとも「ただの選手供給国」に成り下がりるのか? 

 Jリーグは今後、代表の「強化」と、リーグの「質の低下と空洞化」という、想像を超えたジレンマに苦しむことになるだろう。